残間 この間、宮本亜門さん
(北村さんが代表を務めるシス・カンパニーに所属)に
聞いたんですが、北村さんは3年先まで
公演のスケジュールが決まっているんですってね。



北村 そうですね。今だと2013年まで決まっています。
劇場、演目、それから出演者もだいたい決まってますね。
私がせっかちなせいもあるんですが、
日本は3年ぐらい前じゃないと、
劇場が押さえられないんですよ。



残間 ロンドンだと半年前から制作が
スタートなんて場合もあるそうですね。
いったい向こうと日本の演劇事情の、
どこが違うんでしょう。



北村 向こうの劇場は体力があるのか、
公演がなくて空いてても割と平気なんです。
日本だと死活問題になりますけどね。
それから向こうはロングランを狙っています。
ヒット作になりそうな公演があったら、
先のスケジュールが空いていれば、
すぐにロングランが可能ですから。
それから劇場もですが、日本は役者が空いてないです。
皆さん、舞台だけでなくテレビも映画もありますから、
1年前では、誰も押さえられませんね。



残間 3年先までスケジュールがびっしりという状況は、
不況でも変わりはないのですか?



北村 変わりませんね。



残間 確かに「シス・カンパニー」の舞台は
いつ行ってもお客さんがいっぱいです。
不況の影響って本当にないんですか。



北村 今の時代、興業に不況は関係ないと思うんです。
むしろ逆もあるんじゃないですか。
こんな時だから、舞台を楽しんでみようとか。
かつての食べるものがないという貧しさとは違うようです。



残間 舞台を楽しむという行為が、もう食べることと
同じ土俵に乗っているということなんですかね。



北村 ただし不況になれば、
お金をかける配分は変わってくると思いますよ。
どこにお金を使うかということ。
例えば、いまテレビがどん底ですよね。
どんどんテレビ離れが進んでいる。
でも一方でいろんな楽しみも増えて、
面白いところには人が集まっている。
結局、いい芝居を打てばお客さんは入るんですよ。



残間 「バーチャルからリアルへ」という
流れなのでしょうか。やっぱり"生(なま)"だと。
そういえば7〜8年前ですか、
「これからはバーチャルだ!」という感じで、
何かバーチャルの方が偉いような
言われ方をした時がありました。



北村 ありましたね。



残間 その時、テレビの人たちは呑気に構えていたんですね。
自分たちは"リアル"をやっているんだって
思ってたみたいで。
だから今の状況になっているんでしょうけど。

音楽も様変わりしましたよね。
ダウンロードになってディスクはもちろん、
パッケージだとかライナーとかなくなってしまいました。
本当にコンテンツだけ。
ただしコンサートだけは変わらないんですね。
それと同じように、芝居というのも変わらないというか、
代えがたいものですよね。
同じ時空を共有するという究極の生。



北村 確かに生のダイナミズムへの
回帰というのはあるかもしれません。



(つづく)