5月7日(水)
3日、大型連休(NHKではこう表現するんですって)の後半初日。 「どよう楽市」が終わり、番組HPの 「はみ出し日記」を書いて、 急ぎ羽田空港に。 これから黒部ダム視察に行くのである。 羽田でナカヤマと待ち合わせて富山に。 富山空港からタクシーで電鉄富山駅に行き、 富山地方鉄道に乗って宇奈月温泉駅まで。 ここで今回ツアリーダーをしてくれる関西電力のキタノ氏と合流。 一緒に視察する関西地区の大学教授やビジネスマンたち。 初対面とは思えないほど打ち解けて、楽しい旅となった。
ところで、 何故、黒部に来ることになったかといえば、 関西電力で仕事をしている友人の一言がキッカケなのである。 彼とは昨年の「技能五輪」で一緒に仕事をしていたのだが、 一緒に食事をしていた席で「黒部はいいよォ~」と言ったのだった。
「あっ、それって『黒部の太陽』の舞台よね。 破砕帯を突破する男のドラマ、あれよね。 それと、中島みゆきが紅白歌合戦で『地上の星』を歌った場所でもあるのよね。 「行ってみたいなぁ」と呟いたら、 それからしばらく経った今年2月、彼から電話があり、 「行けるように申し込んでおいたよ」と言うのである。 「うわぁ、ありがとう!それでいつ?」と聞くと、 「まだ解んないんだよ。冬は道路が閉鎖されているんだけど、 それが解除されるまで待たなきゃいけないんだ。 毎年概ねGWの頃らしいけど.........」との答え。
で、結局4月末まで待って、 「5月の4日ならいい」ということになって、 出かけてきたのである。
一般の人は、黒部峡谷鉄道、通称トロッコ電車で、 欅平までは行けるのだが、 その先は関西電力の管轄となっており、 保全上、一般の人が自由に立ち入ることは出来ない。 入場が許可されているのはダムや隧道のオペレーションスタッフと、 保守・点検担当の人、 関西電力の広報活動の一環で許可される視察者、 そして公募・抽選の結果(昨年の最高倍率は7.6倍) 招待された一般の人だけだ。
私たち視察者は欅平から竪坑エレベーターで200メートルほど上り、 そこでバッテリーカーに乗り換えて、 高熱隧道を抜けて黒部第四発電所(くろよん)へ。

そこからインクラインという乗りものとバスを乗り継いで、
黒部ダムに到着するというコースだ。
黒部ダムへは信濃大町側から自由に入れるので、
到着すると、沢山の観光客と合流することになる。
ダム周辺の気温は予報によれば6度くらいだったのだが、
いざ来て見れば風は涼やかだが、
太陽燦々で15、6度はあるのではないだろうか。
ダウンジャケットで来ていた若者が汗をかいていた。

220段の階段を上ってダム展望台まで行くと、
北アルプスの山々に囲まれた黒部ダムが見られるのだが、
私は3分の2のところにある休憩所でリタイア。
視察経験豊富な私の勘(?)だと、
ここで70段を端折っても景観に大きな差はないと踏んだのである。
何事も「ゴール」がある時は、
たとえボロボロになってもリタイアだけはしたくないというナカヤマを諭して、
休憩所名物の木イチゴソフトクリームを食べながら、
眼下のダムを眺めた。
ナカヤマは景色の一つ一つにいちいち感嘆の声を上げ、 「自然っていいわねぇ。癒されるわ」を連発するのには驚いた。 案内役のコノガワ氏によれば「こんなにアルプスが美しく見えるのは、 年に数回あるかないか」ということらしいし、 実際美しいことは美しいのだが、 チョモランマを見たわけでもないのに、 ナカヤマみたいに大袈裟に感動することもないと思うのである。 誤解を恐れずに言えば、 私は自然(だけ)には感動しない性質(たち)なのである。

「自然が造った素晴らしい景観。雪を頂いた山々の輝き。
萌え出したばかりの木々の微妙な黄緑色。見たこともない景色だわ。
いくつもの季節を越えてきた万年雪にこうして直に触れている私たち.........。
感動しない方がおかしいと思うけど」とナカヤマは、
まるで私が冷血無感動人間みたいに言うのである。
「たしかに綺麗だとは思うわよ。 でも、こんなの時間が経てばこうなるじゃないの。 今、目の前に広がる全ての景観を人間が造ったと言うなら感動するわよ。 木を植え、山に雪をかぶせ、万年雪を配置したなら感動するけど、 自然は放っとけばこうなるでしょ」とうそぶく私。 「悠久の時の流れの中、今、ここでこの素晴らしい景色を見ている、 ということにも感激しないの?」と呆れ顔のナカヤマ。
「私は自然よりもダムを造ったり、灼熱の隧道を掘り進めたり、 なかなか貫通しない破砕帯を貫通させたことの方が何倍も感動するわね。 そこに人間が絡んでいないと、面白くないじゃない。自然は人間ドラマの背景、 そう借景としては思い出に残るけど、ただ自然がそこにあるというのは退屈だわ。 白馬岳や鹿島槍岳より、夕べ宇奈月で行ったカラオケ屋さんの経営者カップルの方が ずっと興味があるわ。夥しいラメでキラキラ光らせたセーターを着たママらしい人と、 白髪をチョンマゲにしていた団塊世代周辺とおぼしき男の人。 生きるセンスは真逆に見えるけど、夫婦なのか、愛人関係なのか。 凄く愛し合っているようには見えなかったけど、 私たちが歌っていると二人ともさりげなく手拍子をとったりしていて、 いい人みたいだったわよね。男は土地の人には見えなかったけど、 どこかの都会から流れてきたのか.........。 つまりね、わたしゃ、何時間見ていても変わらない自然より、 想像力の膨らむ人間の方がずっと感動的だと思うけどね。 あなただって自然そのものに感動しているんじゃなくて、 この美しい自然の前にいる自分、いろんなことがあっても元気にこういう景色を見る ことが出来る自分自身に感動してるんじゃないの?」と、言い張る私。 いずれにしても旅先ならではの議論だ。
人といえば、 中島みゆきが「地上の星」を歌った場所はたしかに実在していた。 零下2度の隧道の中で、赤い薄物ドレスで熱唱したみゆきの姿が、 あまりに見事だったせいで(途中から肩が半分露出していたはず) あれは合成映像ではないかと噂されてもいたが、 「とんでもない。中島みゆきさんはリハーサルもきちんとやり、 そのたびにダムの控室からここまで来たんですから。 何よりもこの私が案内したんですから」 我らのガイドのコノガワ氏は「生き証人」を強調するのだった。

トロリーバスで扇沢駅に降り、
そこからバスで信濃大町駅まで行って、
大阪組とお別れの時。
時間的には短かいものだったのだが、
いろんな乗り物に乗ったせいか、
長い旅をしている仲間のような気がして名残惜しかった。
ナカヤマと私は一路、蓼科へ。 ここでは昨秋、 突然移住した画家の福山小夜さんを訪ねることになっている。
長くなりすぎたので、 その模様は次回でお届けします。














































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